次なる世代インタビュー 【第1回】(2013年秋収録)

ハルナグループ各社の未来を担う「次なる世代」を代表して、青木日出生、山崎敦也に営業・マーケティングをテーマに、三原修一、古市直也、坂上寿に製造・品質などをテーマに、インタビューを試みた。彼らは、どうハルナグループをけん引し、どうリーダーシップを発揮していくのか、その意気込みを代表・青木清志が聞き出す。




企業のトップになるということ

青木清志(以下、青木):
2016年の株式公開に向かう中で、皆さんの意識も変わると思いますが、それは2015年3月までの過ごし方によって違ってきます。皆さんがどのようにこの時期を過ごすのか、質問していく中で皆さんの覚悟の程を確認していきます。 経営者になる素質は、誰もが持っているかもしれませんが、素質だけでは駄目です。適性も必要、そこは先輩が見極める、ということになります。経営をやりながら学ぶのも悪くはないですが、これからの時代はそれで十分とはいえません。この期間の中で、やるべきことを確実に乗り切れる人が必要です。まずはそこへ向かってください。 早速ですが、これまで皆さんは、企業のトップになりたいと思ったことはありましたか。
坂上寿(以下、坂上):
前の会社で、営業として勤務していた20代前半は、今と全く違った分野で生計を立てようとも思っていました。。
三原修一(以下、三原):
私も20代前半にありました。ここへ入社する前は、今と全く違った分野で生計を立てようとも思っていました。
古市直也(以下、古市):
私も同じです。20歳半ばに思いました。社会に出て3年目の頃です。工業製品の研究開発の分野で業務を行っていた頃です。「組織のトップを!」と思っていました。
青木:
そのとき抱いた「初心」は、どうです? 今もありますか?
坂上:
「いつの日か、どこかで」と頭の中では考えていました。
三原:
私は挫折しましたが、今はこの会社にいることで幸せを感じることができたので、自身の能力を最大に発揮したいと思ってきました。しかし、トップという意識はあまりありませんでした。
古市:
年を経るほど、いろいろな課題が大きくなり、やればやるほど多くの知識が必要なことを実感しました。そうした現実の中で、当初の思いは薄らいできていました。
青木:
現実の仕事に従事する中で、思いは変わってくるものでしょうね。20代から40代を経過してきて、今回の指名までの心境はわかりました。では今、社長候補の指名を受け、もう一度、昔と同じ気持ちが蘇りましたか。指名をどういう気持ちで受け止めましたか?
坂上:
現状では、大変厳しいなと思いました。私はこの業界のことをまだまだ理解していないことが沢山ありますので。しかし、ハルナジョイパックの中でやりたいこともありましたので、チャンスを頂いたとも感じました。
青木:
自信や期待は?
坂上:
指名を受けて、不安よりもやらなければいけないと前向きになりました。
三原:
「グループに貢献したい」という意識の下、「自分の立場はここだ!」ということを考えました。ただ、経営を担う立場を考えると、不安があります。正直、恐怖ですね…。
古市:
指名を受けたことで、評価をいただいたという嬉しさがありました。同時に今までの業務の中で、品質、製造、社会環境、経理に携わり、その中で、改めて楽しさを感じていたときでしたから、すぐに覚悟ができました。しっかり取り組もうと思っています。

どう経営していくのか

須齋嵩校長(以下、須齋):
模範として青木代表がいますが、改めて創業者の精神とは何か。また、原点に戻り、経営をすることについてどう思いますか?
古市:
新たなことに挑戦すること、始まりだと思います。

三原:
私は他の業界から当社にきました。30代前半でしたが、何をしても先行きが暗い時代でした。その中で、代表が、当時まだ多くに知られていないぺットボトルという分野で、群馬の地で創業されたことを見ると、(創業者の精神とは)他の人にはできないことをやるということだと思います。世の中に必要とされるものを作り出す、あるいは、世にないものを作ることです。

坂上:
当社の記念書籍2冊を読んで「創業家精神」について考えれば考えるほど、答えがなく、いろいろな形があるものだと思いました。逆に、今回はいい機会なので、青木代表にこのことについてお聞きしたいと思っていました。
須齋:
青木代表は皆さんに対して、意見を言うこともあると思いますが、それらを吸収し、もう一度考えることが大切です。中澤社長は創業から工場に入り、経営の仕方など、代表の生き様まで吸収しているでしょう。そういったことが重要です。
中澤幹彦理事(以下、中澤):
経営者を具体的にイメージしたのは、代表から「やってみないか」と言われた頃です。まだ一担当のときに、トップから経営者へと言われ、私は経営とは何だろうと思いました。皆さんは経営とは何か? 自分の会社に何が貢献できると考えていますか?
古市:
私は、経営とは携わる人を幸せにすることであり、いろいろな方法が存在すると思います。そして、その方々が最大の力を発揮して組織を作り上げることだと考えます。
三原:
時代により強弱はあると思いますが、理念を持ち組織を回し、それにより利益を上げる。そういった活動で社会に貢献できると思います。日本は平和すぎると言われますが、私は、平和が日本の経営に必要だと思います。 私は今まで、会社で勉強させていただきました。それを最大限に発揮し、覚えたことで代表の理念を広げていきたいと思います。
坂上:
組織を存続、永続させることです。組織の永続が結果として社員の幸せや社会貢献につながるのだと思います。
中澤:
青木代表の経営の考え方は、「演劇型経営」により、成果を出すことだと思います。つまり、人を育てることです。
青木:
トップになったら、どういう経営をしたいですか?
三原:
製造分野では、付加価値商品の創造や時間や物、物流に対応するのは難しいことですが、その真実を探すことが重要です。例えば、その活動で何が本当に正しいかを探すことが経営の活動となると思います。
古市:
私は全体最適、つまり社員教育、人の育成です。社員が自発的に行動できることが幸福になる組織づくりだと思っています。
坂上:
まず自分が率先垂範していきたい。また社会人として基本的なことを当たり前に出来るように導いていきたい。更に私は専門の方に知識等では追いつけないですから、その方々に権限を委譲し「責任は私が取る」という形で皆さんの仕事に夢を持ってもらう。また、その夢を語れる経営者になりたいと思います。

経営において、注意すべきことは?

青木:
ひと言で、経営の上で注意しなければいけないことは何だと思いますか?
古市:
自身の振る舞いです。
坂上:
自身の言動や行動です。
三原:
能力を持ち、育つことです。
青木:
いえ。能力ではなく、判断が解決するんです。能力だけでは、自分の強みを振り回すことにもなりますね。
三原:
はい、感性です。
須齋:
経営者の人間力とは何でしょうか? トップとトップ以外の人とは、大きな溝がありますね。その中で経営の感性をどう磨くのかが大切です。青木代表は人間力のある経営者ですが、皆さんはどう考えますか?
三原:
青木代表は現場に直接来ます。現実を見ることが重要です。必ず現場に触れてみることだと思います。
中澤:
青木代表が現場を見るのは、ご自身で組織としてのシナリオをつくろうとしているからでしょうね。青木代表の「熱意」と「使命感」と言いますか。
古市:
すべての真実を受け止める力が重要だと思っています。経営者に必要なことは、現実を受けて見通せる力です。

坂上:
責任を含めて、覚悟を持つことです。また自分をさらけ出してコミュニケーションをとり、皆に認められること、認められる人物になることが重要です。

須齋:
経営者における人間力は、部下からもHDのトップからも尊敬され好かれることです。信頼され期待され好かれること。人から好かれることで、部下は絶対ついてきます。
中澤:
目指している立場は社長、経営者ですが、やはり利益を上げなくてはいけません。利益を上げるポイントは何だと思いますか?
古市:
今、私はファクトリーにいますので、いかに生産の中でコストを最小化するかがポイントだと思います。
坂上:
自身で考えて、行動出来る人を一人でも多く育成することです。
三原:
ロジスティクスの会計の部分は難しいのですが、単に利益だけでなく、我々の業務に価値があること、我々の活動によって、協力会社やお客様、運送会社といった、全体の動きを生み出すことが必要だと思います。
中澤:
私は、青木代表の言われる「演劇的経営」で、人を使うためには、演技だけでなく人に感動を与えなければいけないと思います。業務で立場が違いますが、人に喜んでいただける「顧客志向」を超えること、感動を与え歴史になる。テクニックだけではなく、青木イズム、ハルナイズムを感じてください。これが、まさに経営理念です。

製造業の雇用はどうなるのか

青木:
高度成長時代は、皆さんはまだ学生で実感を伴うものでないと思いますが、1960~70年製造の現場は、それはものすごい勢いでした。1960年代頭は、製造業の従業員は1000万人を超えていました。私は当時、新聞を読み、驚きました。その後、1973年の石油ショックを境に下がるかと思いましたが、まだ上がりました。とにかく油の価格が5~6倍、そして10倍にまでになり現場は大変でしたが、人は減らなかった。1992年で1600万人、その後バブル崩壊を経て、今は800万人です。ピークからは半分になり、日本は製造業を続けられるのかと危惧するほどです。ハルナは製造業に従事していますが、製造業界の人員は、今後もっと減っていくのか増えていくのか、どう考えますか?
坂上:
減らないと思います。ある程度でとまるのではないでしょうか。日本の製品の品質はいいですから。今まで萎縮していただけです。日本で製造し、海外へ。コストはかかりますが、知恵を絞ればできると思います。海外進出による新たな市場の開拓。まず、農業林業の加工品でふえるのでは、と思っています。
私は営業で、お客様と直接触れ合う立場です。ハルナと付き合えば、他よりも先んじて対応してくれるなど、得意先と一体となり、消費者に提供できる状況を目指すべきだと思います。
青木:
確かに、生産という面で、農業の力は落ちていていますね。その一方で、農産物の加工という面で、これから成長する可能性が大いにあります。日本の最前線では、付加価値をつくることが、人々の努力によって行われています。
三原:
人員は増えてほしいですし、増えると思います。日本人の気質はものをつくるだけで終わることはなく、研究し、よりよくすることにあります。
古市:
現状維持か、減らないと思います。国としては、ものをつくることが根底にあり、一時的には海外へとなっています。ただ、どうしても人口問題で減少はあっても、携わる人は減らないと思います。
青木:
人のために加工する、物をつくるということで、製造業も変わると思います。器用な日本人に向いているのですから、製造業の将来は、現場の人間は減っても、携わる人は研究開発も含め、下がらないのかもしれないね。今後、人口は9000万人を切るだろうが、構成区分は増えて、その内容が変わるでしょう。
須齋:
会社で収益を上げることが重要です。出る費用を最小にして入る費用を最大化することですが、その際、お客様への対応についてはどう考えていますか? また、グループは今の状況のままで甘んじるわけにはいけない。開発をしていくことが重要な分野です。グループ全体の立場からどのような開発をしたらいいかなど、ご意見をお聞きしたい。
三原:
お客様に対して、感動や顧客志向を超えるサービスの提供と開発は日本の強みです。アイデアをいち早く見つけて、他ができないことを商品化するスピードが大切だと思います。
坂上:
私は営業で、お客様と直接触れ合う立場です。ハルナと付き合えば、他より先に持ってきてくれるなど、三位一体となり、消費者に提供できるような状況を目指すべきだと思います。

古市:
一方通行ではなく、双方的な関係を続けなければいけないと思います。最後にお客様から「よかった!」とコメントをいただける対応をすることです。お客様がやりとりして、ハルナグループと付き合ってよかったと思われることです。先方に言われたこと以上に、よりよい働きかけをして取り組むこと。既存のものだけでなく、新たなものを提案できることが欠かせません。

経営者の資質とは?

中澤:
経営者の候補として、どのような資質が必要と考えますか?
古市:
指導力です。
三原:
渦をつくることです。自身のやりたいことの渦をつくり、周りを巻き込み、プロジェクトを形にしていくこと。製造でも、ロジスティクスでもできると考えています。
坂上:
私は決意と責任感です。
中澤:
なるほど。皆さんの考えはすべて正解ですが、私が考える経営者に求められることは、先を見る目だと思います。スピートも強みではありますが、先を見る目こそが経営資質です。投資効果の高いものを選ぶなど、遠くまで見て長期を見る。見る目を鍛えることが、一つのポイントだと思います。
青木:
皆さんそれぞれの考え方が、少しイメージできるようになりました。これから半年ごとに行いますよ(笑)。そういえば、2013年9月に、私の「文庫」をつくりましたが、そこから借りた人はいますか?
三原:
私は、品質管理の基礎、生産管理の基礎、水素エネルギーの今後、経営の謎といったものです。
坂上:
環境エコノミー、経済史など借りました。
古市:
豊田式、生産関係などです。
青木代表:
わかりました。これからこの機会には、「素面」で人と話をする努力をしましょう。構えたり躊躇したりするとは思いますが、次のインタビューは素のままで取り組んでください。